弾性とゴム弾性 Elasticity and Ruber-like elasticity 
弾性率 Elastic modulus ヤング率 Young's modulus 

弾性とは
弾性とは、ある物質に力を加えて変形させた後、物質から力を取り除くと、完全にその物質が元の状態に復元する性質のことをいいます。また、このような性質を示す物質のことを弾性体といいます。

弾性というと、何となく、ボールのような良く弾むものを思い浮かべてしまいますが、実際には金属やガラス、木材などすべての固体が弾性を有しています。
ある物質をある長さまで引っ張ろうとした場合、当然、その物質の種類によって必要な力は違いますが、この時の力は次の式で表されます。

F = k*L

つまり、対象物質をLだけ変形させるためにはFの力が必要になるわけですが、物質の種類によってkの値が違うため、引っ張る力も変わることになります。
kは弾性率あるいはヤング率といい、物質の種類によってきまる定数です。つまり、金属などのように引っ張るのに大きな力が必要な物質は弾性率が大きく、ゴムのように少ないちからで良く伸びるものは弾性率が小さいことになります。
先に述べたように、イメージ的には、ゴムボールのようなものの方が弾性が大きく感じてしまいますが、実際には弾性率自体は金属や木材の方が、圧倒的に大きいことになります。

弾性のメカニズム
あらゆる物質は原子や分子の集合体として成り立っています。金属の場合は金属結合によって、また有機化合物の場合は主に共有結合によって原子・分子同士が結びついています。このほかにも、イオン結合や、水素結合などの分子間力など結合形態はさまざまです。

ところで、物質を引っ張る(あるいは変形させる)ということは、この原子・分子同士の結合を引き離そうとする作業に他なりません。
つまり、分子たちは自分たちにとって安定な状態になるようにお互い結びついて物質を形成しているわけですから、そこに無理矢理引き離そうとする力が働くと、それぞれの分子間にはたらく結合力がその抵抗力となり、引き離そうとする力が強ければ強いほど分子同士の結びつきは徐々に不安定な状態になって歪んでいきます。(エネルギーが蓄えられている)
ここで手を離すと、分子間にかかっていた力が解放されて(蓄えられていたエネルギーが放出されて)、分子たちは再び元の安定な状態に素早く戻ります。(バネのイメージ)



ちなみに、このとき引っ張る力が原子・分子間の結合力よりも強い場合は、その物質はちぎれたり引き伸ばされたりして、力を除いても元には戻らなくなってしまいます(弾性限界)。

ゴム弾性
ところで、上図で説明したように、物質の伸び・変形が原子・分子間の結合の歪みによってのみ起こるとすると、金属はともかく、ゴムのように最初の長さの何倍も(あるいは何十倍も)伸びるような物質の場合は、原子・分子間の結合距離が何倍・何十倍も広がっているのでしょうか?
実際にはそんなことは考えられず、原子・分子間の結合の歪みによる変形は、最初の長さのわずか1%にも満たないとされています。
では、なぜゴムは自身の何倍もの長さまで伸びることができるのでしょうか?

ゴム弾性のメカニズム
ゴムのような物質は金属などとは違い高分子物質と呼ばれます。
金属は個々の原子が構成単位となり、それらが規則正しく並んでお互いが結合することで形成されているため、それぞれの原子はほとんど自由に動くことができません。
これに対し、ゴムのような高分子物質はひとつひとつの分子がとても長く、それらが寄り集まることで作られています。これは、長いひもが適当に絡み合っているような状態のため、規則性は金属に比べ非常に小さく、またお互いの結びつきも小さいので、各分子がある程度自由に動き回ることができます。(物質全体が動くぐらいのダイナミックな分子の運動をマクロブラウン運動というのに対し、このように物質内で高分子鎖の各部がある程度の狭い範囲で自由に動く運動をミクロブラウン運動といいます)



ところで、長いひも(高分子鎖)の各部がそれぞれ自由に動き回った場合、全体的にはどのような形態に落ち着くでしょうか?
右に行くものもいれば、左に行くものもいる。上に行くものもいれば、下にいくものもいる。
これら全体の動きを平均すると、結果的には下図のような団子状に折れ曲がった状態になると(統計的に)推定されます。



つまり、ゴムのような高分子物質は、このようにそれぞれの高分子鎖が丸まった(折れ曲がった)状態で形成されていることになります。そして、彼らにとってはこれが一番安定な状態ということになります。(みんなが自由に動いている結果なので)

なぜゴムはあんなに伸びるのか? その答えがこの丸まった高分子鎖にあります。
つまり、ゴムの伸びは、ゴムを構成するこれらまるまった高分子鎖を一定の方向に引き伸ばすことによって実現されます。
金属のときの結合の歪みのような小さな変化ではなく、ゴムの場合は、丸まったひもを真っ直ぐに伸ばすという大きな変化のため、ゴムは最初の何倍もの長さまで伸びることができることになります。

また、高分子鎖にしてみれば、せっかく自由に動き回り安定な状態で丸まっていたのに、無理矢理一定の方向に引き伸ばされてしまっているため、高分子鎖は自由に動き回ろうとジタバタします。このジタバタしている抵抗力が引っ張るときにかかる力になります(弾性力)。また、手を離せば、それぞれの高分子鎖はまた自由に動き回り、結果として、再び丸まった状態に落ち着くことになります。(ゴムがもとの形にもどる)



このように、高分子鎖の伸び縮み(ミクロブラウン運動)によって起こる弾性をゴム弾性といいます。
また、ゴム弾性は分子の熱運動の制約・解放によるエントロピー変化によって起こることからエントロピー弾性とも呼ばれます。

ゴム弾性はガラス転移点以上の状態の高分子物質(高分子鎖のミクロブラウン運動が可能な状態)であれば発現されます。しかし、その度合い(伸び度合い)は高分子鎖間の結合度合いや架橋度合い(高分子鎖同士が所々繋がっている)によって大きく左右されます。当然、分子鎖の自由度が高いほど(架橋度合いが低いほど)伸び率も高くなります。
ただし、架橋や分子間結合が少なすぎ、高分子鎖の自由度が高すぎるとミクロブラウン運動どころかマクロブラウン運動も起こってしまい、ゴムが一定の形態を維持できず液体的に流れてしまい(流動)、ゴムの弾性特性は小さくなります。
(実際には、ほとんどの高分子物質は弾性と粘性の両方の性質を併せ持った粘弾性を示します)

弾性とゴム弾性の違い
これまでの話から弾性とゴム弾性には次のような違いがあることがわかります。

・弾性は原子・分子間の結合力が原因で発生する。
・ゴム弾性は個々の高分子鎖のミクロブラウン運動が原因で発生する。

・弾性は結合力の歪みによる変形のため、変形率は非常に小さい。
・ゴム弾性は高分子鎖の伸び縮みによる変形のため、変形率は非常に大きい。

・弾性(率)は原子・分子間の結合力が原因のため、温度変化によってほとんど変化しない。
・ゴム弾性(率)は分子のミクロブラウン運動が原因のため、温度が高くなるほど大きくなる。(温度上昇にともない、分子の運動性も高くなるため)

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