ガラス転移 Glass transition 
粘弾性 viscoelasticity 低反発弾性 Low resilience 
形状記憶 Shape memory 

ガラス転移点
一般的に物質には融点や沸点があることは有名ですが、プラスチックをはじめとする高分子物質では、この他にガラス転移点(ガラス転移温度Tg)とよばれるものが重要になります。これらは、物質を構成する分子の運動性に関係しています。
形状記憶性はこのガラス転移点を利用しています。
一般的に、分子や原子は温度が高いほどその運動性が高くなり、それぞれの分子が自由に動こうとするようになります。
これとは逆に、それぞれの物質にはお互いに引き合う力も働いており(万有引力など)、この相反する力のバランスによって物質の状態が決まります。
つまり、気体は分子同士が引き合う力よりも、自由に動こうとする力の方が圧倒的に大きい状態、液体は両方の力がそれなりに釣り合っている状態、固体は引き合う力の方が強い状態になります。



ここで、高分子のような物質は一つひとつの分子が長いこともあり、一見、単純な固体に見えるような状態でも、ミクロ的にみると、部分部分の分子はまだある程度の運動を行うことができます(ミクロブラウン運動)(ゴムが曲げたり、伸ばしたりできるのは、分子鎖がある程度変形したり移動したりできるためで、この状態はゴム状態ともいわれる)。この状態で、さらに温度が下がると、今度は分子鎖の部分的な運動性も失われて、ゴムから柔軟性は失われます。この状態をガラス状態といいます。このゴム状態とガラス状態の転移点をガラス転移点(Tg )といい、融点や沸点同様、それぞれの物質を構成する分子の性質によって決まります。



このようにTgを境にして、高分子鎖の運動性が大きく変わるため、素材の諸物性も大きく変化します。



そのため、上図のように、硬さなどの物性を温度を変えて測定することで、その素材のガラス転移温度をある程度知ることが出来ます。
一般的には、DSC(示差走査熱量測定)による熱量変化の測定や、レオメーターによるtanδ=G''(損失弾性率)/ G'(貯蔵弾性率)の測定
によって求められます。

ガラス転移点と物性
これまでの説明からも明らかなように、高分子素材は、このガラス転移点をコントロールする事で様々な特徴を見いだすことが出来ます。(いわゆるプラスチックのようなカチっとしたものはガラス状態、輪ゴムなど柔軟性のあるものはゴム状態の高分子素材になります)

以下、幅広い物性の素材が得られることで知られるウレタンフォームを例にとって説明します。

<軟質ウレタンフォーム>
スポンジやクッションなど柔らかく柔軟性のあるウレタンフォームのことを軟質ウレタンフォームといいます。
軟質ウレタンフォームはそのTgをマイナス数十℃以下にすることで得られます。
つまり、Tgを常温よりも遙かに低くすることで、室温では常にウレタンフォームがゴム状態を維持できることになります。(分子鎖が運動性を持っている)



<硬質ウレタンフォーム>
住宅の断熱材などに使われるようなウレタンフォームは柔軟性に乏しく、カチカチで硬質ウレタンフォームと呼ばれます。
硬質の場合は、軟質とは逆にTgが百数十℃になるように樹脂設計を行います。
その結果、ウレタンフォームは室温では常にTg以下のガラス状態になるため、ウレタン分子鎖は運動性を失い、柔軟性に乏しい硬い性質を示します。



<低反発ウレタンフォーム>
最近、低反発枕が安眠枕として広く利用されていますが、それらの多くにはウレタンフォームが使用されています。
この種のウレタンフォームは低反発ウレタンフォームあるいは粘弾性ウレタンフォームと呼ばれていて、変形戻り性が遅く、衝撃吸収性のあるしっとりした感触が特徴です。

このようなタイプのウレタンフォームは、一般的に、Tgを常温よりもやや低い温度に設定することで得られます。
つまり、ウレタンフォームは室温において、完全にガラス転移点には達していないものの、転移領域にさしかかりつつある状態になっているため、ウレタンフォームを構成する分子の運動性が鈍り始め、粘弾性における粘性の比率が高くなっています。
結果として、反発性の低い、しっとりした感触のウレタンフォームが得られることになります。

<形状記憶ウレタンフォーム>
形状記憶素材といわているもののなかにも、このTgのコントロールによって作られているものがあります。
この場合は低反発ウレタンフォームとは逆に、Tgが40℃や50℃など室温よりも少し高くなるように調節します。

こうすることで、室温では硬いのに、少し暖めると柔らかくなる素材ができます。



Tg型形状記憶素材の仕組みは以下の通りです。




<まとめ>
最後にTgとウレタンフォームの特性の関係をまとめると以下のようになります。


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